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PRP外来 Platelet-Rich-Plasma

多血小板血漿(PRP)療法 PRP Therapy

反復動作やスポーツ活動、また加齢などにより発生する関節や靱帯・筋肉・腱の損傷や炎症に対して、一般的には安静や、鎮痛剤、鎮痛の効果のある外用剤(湿布や塗り薬)を用いたり、ステロイドや局所麻酔剤の注射、装具療法(痛みが起こる周囲の関節を固定したり、筋肉の動きを抑制する)を行います。しかし、炎症の原因となった運動を中断することが出来ない場合、しばしば慢性化し、これらの治療法でもなかなか症状が取れないことがあります。近年、上述の治療法と同等かそれ以上の効果を持つ治療法として、自己多血小板血漿(PRP)を用いた治療が国内外で広く行われるようになってきています。

血液には血小板、白血球、赤血球という細胞が含まれています。PRPとは、血液を遠心分離機(回転による遠心力を利用した分離装置)にかけ、血小板を多く含む血液成分を取り出したものです。血小板には炎症を抑えるタンパク質や細胞の増殖を促進するタンパク質(生理活性物質/サイトカイン)が多く含まれており、PRPを注射することで、患部の炎症を抑えるとともに傷んだ組織を修復し、痛みを緩和する効果があると考えられます。

血小板に含まれる成長因子
(サイトカイン)とその働き

私たちの新しいPRP療法

一般に使用されるPRPには、血小板以外の細胞(白血球や赤血球)を含まないように抽出した「白血球をほとんど含まないPRP」と白血球も含むように抽出した「白血球を含むPRP」があります。これは精製法や使用されるキット(PRPを精製するための既成の機器)により異なります。また、精製されたPRPの中身(血小板やサイトカインなどの量)は血液を採取した患者さんによって同じ患者さんでも種々のコンディションにより変化し、一定ではありません。つまり、作製されたPRPの組成はまちまちで、実際には投与する側もされる側もPRPの中身(血小板やサイトカインなどの量)は分からず、どのようなPRPがどのような病態に効くかなど医学的根拠が希薄であるというのが現状です。

私たちはこの問題を解決すべく、慶應義塾大学発のスタートアップ企業である株式会社AdipoSeedsとの技術協力により、これまでと異なる遠心分離法を使い既存のPRPよりも血小板回収率(濃縮率)がはるかに高く、かつ、血小板の働きを維持したままのPRPを抽出し、患者さんにお届けします。具体的には有効成分の指標となる血小板含有の2種類のサイトカイン量を刺激前後で測定し、常にある一定量の有効成分を確保し投与致します。このことにより『従来あったPRPの品質のばらつきを最小限』にし、『創傷治癒促進効果を最大限に高める』ことができます。加えて、作製したPRPの中身(血小板やサイトカインなどの量)を分析し、患者さんにお知らせします。実際に投与された血小板数の情報をご自身と医療従事者で共有することで、より信頼と安心をお届けできます。この世界初の特許技術を使い、治療実績を重ねることにより、PRP療法の効能、適応と限界など、PRP療法の医学的根拠も構築致します。

私たちのこの新しいPRPは「白血球をほとんど含まないPRP」です。PRP療法の歴史は浅く、「白血球をほとんど含まないPRP」と「白血球を含むPRP」のどちらが治療効果が高いのか低いのか、どのように使い分けるのかなどは、まだ明らかになっていません。この治療では、従来から用いられており、効果が明らかになっている「白血球をほとんど含まないPRP」を用いて治療を行います。「白血球をほとんど含まないPRP」で効果が見られなかった場合には、ご希望により「白血球が含まれるPRP」(GPSⅢシステム/ジンマー・バイオメット社により作製するPRP)治療を検討致します。

RECOMMEND 治療の効果が期待できる患者さん

このような症状の方はご相談下さい。

  • 変形性膝関節症、変形性股関節症、
    手の変形性関節症、足の変形性関節症、
    または肩腱板損傷と診断された方
  • 上腕骨外側上顆炎、肘内側側副靱帯損傷、上腕骨内側上顆炎、
    急性筋障害(肉離れ)、肩関節周囲炎、膝蓋腱炎、
    または足底腱膜炎と診断された方

TARGET 治療の対象

この治療の対象となるのは、以下の基準を満たす方です。

  • 外来通院が可能な方
  • 患部の状態がPRP投与可能な方
  • PRP調製のための採血が可能な方
  • 全身的な健康状態が良好である方
  • 治療の内容を理解し、本人の自由意志による文書同意が得られた方
    (未成年者の場合は、代諾者の同意が得られた方)

なお、次の各項目のうち1つでも当てはまる場合は、この治療を受けることができません。

  • 抗凝固薬、または抗血小板薬を
    使用中の方
  • 血小板減少症等出血性素因がある方
  • 眼瞼結膜の所見から貧血が疑われる方
  • 重篤な全身性の感染症を有している方
  • 本治療の2週間以内に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用した方
  • その他、医師がこの治療を実施することは不適当であると判断した方

Flow 治療の方法

  1. この治療は、①〜④の4つのステップで行われます。①から③まではおよそ1時間かかります。なお、この治療で採取した末梢血は、全量をPRPの作製に使用します。また、作成したPRPは、治療に使用した後に残存する量は微量なので、保存は行わず医療廃棄物として廃棄します。

    末梢血の採取

    あなたの腕の静脈から、血液を採取します。採血量は、「白血球をほとんど含まないPRP」を作製する場合は約20mLです。「白血球を含むPRP」を作製する場合、疾患や患部の状態から3〜5mLのPRPが必要だと判断した場合は52mL、1〜3mLのPRPが必要だと判断した場合は26mLを採血します。

    PRPの作製

    採取した血液を遠心分離機で遠心し、PRP を分離します。PRPの製造は、厚生労働省に届出を行った、細胞培養加工施設で行います。

    製造したPRPの検査

    PRPが適正に製造されたかを確認するため、品質の検査をします。作製したPRPが品質の規格を満たさなかった場合や、作製中に発生した問題により製造ができなかった場合など、採血を行ったにもかかわらずPRPを注射できない場合があることをご理解ください。また、採血前夜や当日に脂質が過剰に多いお食事やおやつを召し上がられますと、PRPに脂質が多く含まれることになり、規格を満たさなくなる場合がありますので、ご注意ください。

    PRPの注射

    患部へ約1〜5 mLのPRPを注射します。投与量は疾患や患部の状態により異なります。

経過観察 (フォローアップ)

PRPを注射してから1か月、及び3か月後に診察を行い、痛みが改善しているか、機能が回復しているか、合併症が起こっていないかなどを調べ、3か月後の診察の結果を基に、次の治療方針を決定します。診察の結果、効果が見られた場合には、引き続き経過観察する、もう一度PRPを投与する、などを行います。

また、「白血球をほとんど含まないPRP」で、効果が見られなかった場合には、「白血球を含むPRP」を用いた治療への変更を検討します。なお、PRPをもう一度投与する場合、又は「白血球を含むPRP」に治療を変更する場合には、再度、この治療に対する説明を行い、この治療を受けることに対して同意をいただきます。経過観察時に確認する主な検査項目は、以下のとおりです。

安全性

この治療が原因と疑われる疾病等(治療において好ましくない症状など)の発生、
注射部位の感染の有無

有効性

痛みの改善度、機能の評価、画像(超音波、X線、MRI など)による評価

Price 費用について

(1)本治療はすべて自費診療であり、健康保険を使用することはできません。

(2)本治療の費用は、以下のとおりです。なお、費用は、1回の治療に伴う診査、PRP調製のための採血にかかる費用、PRP調製費用、注入にかかる費用、注入に対する痛み止め2日分の総額です。また、一度の治療で左右両側に投与する場合は、下記の1回分の2倍(2回分)の費用がかかります。

費用
PRP療法
白血球をほとんど含まないPRP治療1回(1部位)
270,000円(税抜)
白血球を含むPRP治療1回(1部位)
120,000円(税抜)
検査費用(MRI等)
実費100%(1点10円で計算)(税抜)
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