脳卒中｜慶應義塾大学病院ニューロモデュレーションセンター

メッセージ Message

　急性期病院では命の安全を確保すること、回復期病院では立つことや歩くことなどの基礎的な身体動作、麻痺のない手を使って日常生活を自立して送れるようになることを優先したリハビリテーションが中心になります。

退院後にも「手の動きに集中したリハビリテーションに取り組みたい」、「歩きの速度を高めたり、歩き方の練習がしたい」、「まだ1人で歩くのに不安があるから練習したい」と思われている方もいらっしゃると思います。当センターでは、自由診療という枠組みで、期間や頻度に関する法的な制約なく、上肢や歩行に特化した先進的な治療を提供します。

　先進機器はどれも魅力的なものですが、それを使うだけで身体が良くなっていくのではなく、あくまでも対象者ご自身で身体を繰り返し動かすことが最も重要だと考えています。

Target 対象患者

脳卒中による運動・感覚機能障害を有する方が対象となります。
特に、以下の症状やご希望をお持ちの方を対象としています。

手・足の麻痺があり、
十分に動かすことができない
筋肉のこわばりがあり（痙縮）、
身体の動かしにくさがある
生活の中で手を使う場面を増やしたい
歩きの速度や耐久性を高めたい
杖や装具の変更について検討したい
自主トレーニングの指導をして欲しい

以下に該当する場合は、継続的な利用が困難な可能性があります。

全身の健康状態が不良な方（著しい栄養不良、重度の心疾患、易疲労）
運動練習を著しく阻害するような関節の可動域制限、痛み、しびれがある方
1時間程度の治療に継続して取り組むことが難しい方
高次脳機能障害や認知機能障害などにより、スタッフとのコミュニケーションが難しい方
（症状が軽度の場合はその限りではありません）

上記に限らず、医師・療法士により、その他の理由で利用が困難と判断する場合があります。

Treatment methods 治療法の紹介

※機器ごとに個別の適用条件があります。
どの機器を治療に用いるかは、対象者の身体の状態に基づき、医師と療法士により決定されます。
※治療効果には個人差がございます。

transcranial magnetic stimulation 経頭蓋磁気刺激

頭上に設置したコイルから磁気刺激を行うことで大脳皮質の神経細胞に刺激を与えることができます。特定のパターンの刺激を反復して行うことで、脳の興奮性を高めたり、抑制したりすることができます。
神経細胞に対して直接的なアプローチができる数少ないニューロモデュレーション手法の１つです。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、上肢機能障害および日常生活動作障害に対して「反復性経頭蓋磁気刺激を行うことを考慮しても良い」とされています。
transcranial direct current stimulation 経頭蓋直流電気刺激

経頭蓋直流電気刺激（tDCS）は、頭部に装着した電極パッドから微弱な電流を流し、大脳皮質の神経細胞の活動に影響を与える非侵襲的脳刺激法です。
電気刺激によって脳の一部の興奮性を高める、または抑制することで神経活動の調整（ニューロモデュレーション）を図ることができます。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、上肢機能障害および日常生活動作障害に対して「経頭蓋直流電気刺激を行うことを考慮しても良い」とされています。
brain machine interface ＢＭＩ

BMI（brain machine interface）は、指を伸ばす運動のイメージを行っているときの脳波を記録し、適切な脳波の変化が生じたときに装具による指の伸展と筋肉への電気刺激をフィードバックする治療方法です。
脳と筋肉の神経的な結合の強化を図ることができます。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、上肢機能障害に対して「Brain-computer interface（BCI）を応用した訓練を、通常の上肢機能訓練に追加することを考慮しても良い」とされています。
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MELTz メルツ

MELTzは、手指の動きをアシストするロボットです。電極から筋肉の活動を計測し、AIが活動パターンを解析すること動作練習を高頻度で反復的かつ効果的に行うことができます。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、上肢機能障害に対して「ロボットを用いた上肢機能訓練を行うことは勧められる」、日常生活動作障害に対して「ロボットを用いた訓練を行うことは妥当である」とされています。
Extracorporeal shock wave 体外衝撃波

体外衝撃波治療（ESWT）は、圧縮した空気によって発生させた衝撃波を皮膚表面から照射することで、筋肉や軟部組織にアプローチする治療法です。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、痙縮について「体外衝撃波治療（ESWT）を行うことは妥当である」とされています。
functional electrical stimulation 機能的電気刺激

電極から筋肉の活動を計測し、電気の刺激により筋肉の動きをアシストします。手を動かしやすい環境を作り、物品の操作練習等を反復的かつ効果的に行うことができます。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023]では、上肢機能障害について「中等度から重度の上肢麻痺に対して，もしくは肩関節亜脱臼に対して神経筋電気刺激を行うことは妥当である」、歩行障害について「下垂足を呈する脳卒中患者に対して，歩行機能を改善させるために機能的電気刺激を行うことは妥当である」、日常生活動作障害に対して「電気刺激療法を行うことは妥当である」とされています。
treadmill exercise トレッドミル歩行

トレッドミル歩行はウォーキングマシン上で一定速度のベルトに合わせて歩行することで、歩行能力の向上を目指す練習方法です。手すりの使用や体重免荷装置（ハーネス）を併用することで、安全性を確保しながら反復的な歩行練習が可能です。
脳卒中治療ガイドライン 2021 [改訂2023] では、「在宅で生活する生活期脳卒中患者に対して，歩行機能を改善するために，もしくは日常生活動作を向上させるために，トレッドミル訓練，歩行訓練，下肢筋力増強訓練を行うことが勧められる」とされています。
ＣＯＳＭＯ

COSMOは、感圧センサー内臓のスイッチです。専用アプリを用いてゲーム要素を交えて、楽しみながら治療を行うことができます。動かしにくい手を積極的に使用したり、立った状態でバランスの練習を行ったりすることができます。